●モッズの起源
60年代に大流行したモッズは一体どこから生まれたのでしょうか。
モッズ・スタイルの起源は、1950年代後半頃に始まる。
もともとお洒落にうるさいロンドン郊外の若者が目をつけたのが、
当時イギリスで登場したイタリアン・スタイルだったのだとか。
これは56年にデザイナーであるセシル・ジーが発表したもので、
光るモヘア素材の丈の短いジャケットに細めのストレート・パンツ、
そして先の細い靴が組み合わされたもの。
さらに60年、ピエール・カルダンがこのイタリアン・スタイルを強調してよりタイトに。
ビートルズで有名な襟なしジャケットも登場した。
また少し裕福な中産階級の人たちは、さらに個性的なお洒落を求めて、
オーダーメイドしたファッションを楽しんでいたようです。
セックス・ピストルズの仕掛人、マルコム・マクラーレンも、
そんな中の一人だったとか。
その頃、カフェ・バーやクラブが大流行し、
お洒落な若者の間で好んで聴かれていた音楽が
モダン・ジャズだったという。
そんなスタイリッシュでセンスの良い若者達はモダニストと呼ばれていたが、
そのモダン・ジャズ趣味もあってモダーンズと縮まり、
モッズと呼ばれるようになっていったというのが定番説でしょう。
●モッズの登場
1960年にイギリスでは徴兵制度が廃止。
これによって18歳からの兵役が無くなったことで、
働き始めた若者が増え、自ら自由となるお金と時間を手にし、
当然ながら楽しみを求め出すようになっていきます。
一部の流行に敏感なモノは、モダニスト達のお洒落を取り入れ、
自分達流に消化していったのでしょう。
この頃に、昼間は働きながら、
夜はファッションをキメて、スクーターで移動し、
ド○ッグをキメて、クラブで踊り明かすというような、
モッズのライフスタイルが形成されていったようです。
そんなお洒落な若者、モッズが最初にメディアに登場したのは1962年、
イギリスのファッション誌『 TOWN 』の特集。
そこで後にT-REXで有名となるマーク・ボラン(当時はマーク・フェルドという名前)が
いたというのは有名なハナシですね。
メディアに採り上げられた事で、
いよいよモッズが注目を集めはじめて一般に浸透していきました。
そして、その中心はあのロンドンのカーナビー・ストリートにあった、
ジョン・スティーヴンスの「ヒズ・クローズ」というファッション・ショップでした。
ブームが近づいてくると、ファッションは徐々にエスカレート。
モッズはより女性っぽく派手でカラフルな服装が好まれてくるようになっていく一方、
モッズ・ガールは男っぽいシャツやパンツ・スタイルが主流だったというのがおもしろい。
既成概念に対する反発の表れなんでしょうね。
1963年になると、あのビートルズが登場し、ブレイク寸前の時だけれど、
同じ頃には、アメリカからはダンサンブルで洗練されたタムラ・モータウンの音楽が登場。
もちろん、モッズ達の音楽の好みは、
より踊りやすいそれらの最新R&Bに人気が集まっていった。
63年から64年頃の典型的なモッズのライフ・スタイルは、
あのモッズ定番の洋書『 MODS! 』のリチャード・バーンズによれば・・・
月曜日
シーン・クラブ(The Scene)で踊る
火曜日
地元のダンス・パーティで踊る
水曜日
ラ・ディスコティックで踊る
木曜日
シーン・クラブまたはマーキー・クラブ(Marquee)で踊る
金曜日
TV番組「Ready Steady Go」を見てから
シーン・クラブかラ・ディスコティックで踊る
土曜日
午前中はカーナビー・ストリートでファッション・ショッピング、
そしてハムステッド、ブリクストンでレコード・ハンティング、
夜はフラミンゴ(The Flamingo)で踊りオールナイター・カフェへ。
日曜日
オールナイター・カフェを出てブリックレーンの朝市でモーニング、
その後、ショッピング&レコード・ハンティングし、
フラミンゴそしてクロウダディ・クラブへ。
深夜、リッチモンド橋のカフェ、ローベルジュでカプチーノ。
これで一週間が終わるという思わず笑っちゃうようなすさまじい生活・・・
この連日の遊び歩きに必須なのが、アンフェタミンにバルビツールを少し混ぜた
青紫色のハート型「パープルハーツ」というド○ッグ。
ド○ッグは気分が良くなり、エネルギーが得られるとともに、
この夜遊びの疲れを癒してくれる・・・らしい。
そして、移動にはデコレイトされたイタリア製スクーターを愛用。
もちろんピアジオ社のべスパやイノチェンティ社のランブレッタが有名である。
さらにスクーターには軍放出品のパーカー、いわゆるモッズ・パーカーが必須。
寒いイギリスには欠かせず、バイクの汚れから自慢のスーツを守ってくれるので重宝された。
●モッズのブレイクと終わり
モッズがより一般的になったのは、
あのモッズのライフ・スタイルを描いた映画「さらば青春の光」で見られる
1964年に起こった「モッズ」対「ロッカーズ」のブライトンでの暴動である。
ここで大きくメディアに取り上げれられ、モッズが一気にブレイク。
しかし「モッズ=不良」という捉え方をされたらしい。
この辺りからチェック・シャツ+モッズ・パーカー+リーバイス+スエード・ブーツという
お決まりパターンのファッション・モッズが増殖。
イギリス中で一大ブームとなる。
そんな中、ザ・フー、スモール・フェイセズが登場し、
当時の最先端R&Bを採り上げて、パワフルなライヴにより人気を得ていく。
しかし、ブライトンに限らず、
ヘイスティングでも同様の暴動が起こり、トラブルが再発。
もともと洒落たファッションとそのセンスを競って楽しんでいたモッズたちは、
そういった後発モッズとは一線をおくようになる。
つまりモダンであったものが、ただの流行となり、
モッズであるという事がクールな事では無くなったという事でしょう。
そして1966年頃にはモッズブームにも陰りが見え始め、
「シーン・クラブ」は閉鎖、
あのTV番組「Ready Steady Go」も12月で打ち切りとなってしまった。
流行としてのモッズは、この時に終わりを迎えたけれど、
このモッズという音楽、ファッションを独自のセンスで消化するライフ・スタイルは
形を何度も変えて現在でもそのスピリットは生き続けています。