●モッズ・ミュージック
モッズの元祖である50年代後半のモダニスト達がお気に入りだったのが、
モッズの語源にもなっているモダン・ジャズ。
マイルス・デイヴィスやモダン・ジャズ・カルテットなどの、
アドリブを抑え目にアンサンブルで勝負したイースト・コースト系、
ジェリー・マリガンやデイヴ・ブルーベック、チェット・ベイカーあたりの
ちょっとソフトでゆったりと踊れる、ウェスト・コースト系、
そんなジャズが好まれていたらしい。
おそらく当時は、それほど情報があるわけでもないので、
イースト・コースト、ウェスト・コーストなんてジャンルよりも、
古いイメージのあるトラッド・ジャズなどに対する、
新しくなにか知的でクールな匂いのあるモダン・ジャズの雰囲気とサウンドに
惹かれていたのではないかと思う。
その中心にはジャズ・クラブ「ロニー・スコッツ(Ronnie Scott's)」があり、
アメリカのジャズメンはロンドンに来ると、
ここでプレイするのが定番となる。
60年代になってくると、モッズと自称するキッズ達も増えて、
クラブやカフェ・バーなどの流行もあり、より踊りやすいR&Bの方に人気が移行。
いわゆるスー、モータウンといったレーベルの、
ちょっとポップな要素もあるブラックR&Bが主流となっていく。
もちろんジェームス・ブラウンのようなダンス・ミュージックの帝王も
すぐさま御用達アーティストの一人。
モーゼ・アリソンのようなジャズとR&Bの中間のような人や、
ジャズ畑の人からは評価が低かったジミー・スミスなどの
オルガン・ジャズが好まれたのも、モッズならではのセンスの良さ。
またUKスー・レーベルというのもかなり重要。
ガイ・スティーヴンズがマネージャーをやっていたこのUKスーは、
本家USスーとはまた違ったセレクトで、これがモッズに大ウケ。
当時の定番曲には、UKスーから出されたシングルが圧倒的に多く、
60年代のブリティッシュ・モッズ・バンドがカバーしていた曲もかなりあり、
その影響力は絶大と思われる。
それらのカバー曲をクラブで熱くパワフルにプレイしていたのが、
ズート・マネーやジョージィ・フェイムなどのアーティスト。
さらにそれをオリジナル曲として昇華したのが、
フーやスモール・フェイセズである。
元々はジャズ・クラブだったフラミンゴ(The Flamingo)は、
59年から金曜の土曜の夜には深夜営業を始め、
ジャズだけでなくR&Bなどがプレイされていて、
モッズご愛用クラブとなっている。
そんな中で人気があったのがズート・マネーやジョージィ・フェイムなのだ。
またヤードバーズやフーなどがプレイしていた
マーキー(Marquee)も元はジャズ・クラブで有名だった。
60年代中頃になってくると、
オーティス・レディングなどのアトランティック系ソウルも登場し、
その心地よいビートと迫力ある歌はもちろんモッズに受け入れられる。
また、イギリスにはジャマイカ移民も多く、
彼らの土産であるドラッグとブルー・ビート、スカも早くから好まれていたようです。
THE IN CROWD THE ULTIMATE MOD COLLECTION
上記のCDボックス『 THE IN CROWD 』は、
60年代にモッズ系として人気のあったR&B、ソウル、スカ、ブリティッシュ・ビートなどが、
CD4枚にまとめられていてなかなか便利。
ブックレットもカッコイー写真が多いし、
全体像を手っ取り早く聴いてみたい方はオススメです。
⇒ BEAT-NETのCDレヴュー