●モッズとスクーター
モッズの3種の神器のひとつ、スクーター。
もちろん、スクーターといってもいわゆる原チャリではなく、
60年代当時のモッズが目をつけたのは、イタリア製であるバイク、
ピアジオ社のヴェスパ、そしてイノチェンティ社のランブレッタである。
そのスタイリッシュなイタリアン・デザインは
正にモッズのイメージにピッタリなのだ。
これにたくさんのライトやミラーでカスタマイズされたスクーターは、
映画「さらば青春の光」でもおなじみのもの。
モッズ達は仲間うちで最もクールな男、フェイスを先頭にして、
V字型に組んで走り、週末はブライトンなどへ繰り出したそうな。
これはモッズ用語では「スクーター・ラン」と呼ばれた。
元々スクーターはそれほどモッズに密接な関係ではなかったようだが、
労働者階級の若者には手の届く価格であった事や
仕立てのよいスーツを着たまま乗れることもあり、
またたく間に広がっていった。
念の為に言っておくと、現在の日本でスクーターといえば、
超お手軽でラクラクなイメージがあるけれど、
当時のスクーターは鉄のカタマリでなかなか重量があって重いし、
もちろんオートマなんかでは無い。
クラッチ・ワイヤーはよく切れるし、なんと混合給油。
混合給油とはガソリンを給油後、オイルを自らガソリンタンク内に入れるのだ。
ガソリンとオイルを入れた後はバイクをシェイク!
ヴィンテージ・スクーターの購入を考えてる人は、
それなりの手間と気合いが必要な事をお伝えしておきます。
●ヴェスパとランブレッタ
ヴェスパとランブレッタは共にイタリア製。
おもしろいのは、マニアックでレアなものを求めるモッズには珍しく、
このヴェスパとランブレッタは、世界中で売れていたスクーター。
やはりその流線型の奇跡的なデザインの良さにひかれたのでしょう。
ヴェスパを発売していたピアジオ社は飛行機を生産していた大企業。
そのヴェスパは1946年に登場した。
性能の良さとデザインの良さ、そして乗りやすいことから、
生産が追いつかないほどの大人気となる。
ご存知オードリー・ヘップバーン主演の映画「ローマの休日」でも
ヴェスパは大活躍。
こんな辺りからもお洒落の代名詞的なアイテムとなっていったようだ。
一方、ランブレッタを発売していたイノチェンティ社は
1922年から鉄パイプを生産していた工場。
ランブレッタは先行していたヴェスパに対抗し1947年に発売された。
ヴェスパより低価格であり、よりスポーティーなイメージでこちらも大人気となったが、
60年代後半にはスクーター自体の人気も下降し、
1971年には生産が終わり、インドのスクーター会社に売却している。
日本に輸入されたのはランブレッタの方が早いらしく、
その技術は日本メーカーがかなり参考にしたとの事。